児童サービス論

設題 ①児童サービスにおける読書の意義と役割について述べ、また図書館における児童サービスがなぜ重要であるかを述べなさい。
②児童資料の種類と特性について述べ、児童サービスの実践においてそれらの資料をどのような場でどのように生かすべきかを述べなさい。
解答
      1行 一 児童サービスにおける読書の意義と役割
      2行  子どもの読書は、言葉、感性、表現力、創造性にとって良いものであり、人生をより深く生きる力を身に付け
      3行 るという意義がある。読書がどのような役割をはたすか、以下に記載する。
      4行 
      5行 1 発達における読書の役割
      6行  読書によって、実物ではないシンボルによって現実の世界にあるものを表すことができることを知ることによ
      7行 り、その後の精神世界が格段に広がっていくことがいえる。また、他者を他者として認識するようになり、その
      8行 ことが翻って自分を再認識し、自我の形成に役立つ。
      9行  また読書には、現実では体験できないことを読書によって体験する、仮想体験の意義がある。これにより感情
    10行 が揺り動かされ、人間性を豊かにする効果が期待できる。書かれていることを読み取り理解したうえで、自分な
    11行 りの解釈や意味付を行うことで、より意義のある人生を送る糧となる。
    12行   
    13行 2 学習における読書の役割
    14行  読書において単語が何を表しているかは、遭遇した場面について、いっしょにいた親が「優しいね」などと言
    15行 葉で表現したり、ある行為を「優しい」と表現している場面に遭遇することで、少しずつ「優しい」という単語
    16行 とその用法を覚えていく。
    17行  仮に読書中、知らない単語が出てきても、前後関係から推測することで理解し、記憶することができる。一度
    18行 誤解した語についても、その後別の場面で使用されているものを読むことで正しい理解に修正されることもある
    19行 
    20行  
    21行 二 図書館における児童サービスの重要性
    22行  図書館における児童サービスは、子どもと本を現時点で結びつけることであると同時に、その子どもが生涯に
    23行 わたって読書し学習していく基盤を作るという縦のつながりもあり非常に重要な役割を担っている。児童が読む
    24行 本をすべて家庭で用意するのは経済的に負担であるので、公共図書館を利用することで負担を軽減でき、子ども
    25行 はどのような本があるのかということを知らないので、目の前にいろいろな本が並んでいるとその中から選ぶこ
    26行 とができるので、視野を広げることができる。
    27行  また、住んでいる地域やその人の経済状況によって得られる情報に格差がでないように、公共図書館が情報を
    28行 収集し、情報を得る手段を提供し、知る権利を保障しており、子どもが市民として活動して行けるようになるた
    29行 めに、適切な情報を提供する必要がある。
    30行  さらに、児童は図書館の本を他人も使用することがあるので、自分の本以上に大切に扱わなければならないと
    31行 いう社会の一員としての公共性を学ぶ機会となる。
    32行 
    33行 三 児童資料の種類と特性
    34行 1 児童資料の種類
    35行  児童資料とは児童のための資料であり、児童資料の種類には次のものがある。
    36行 (1)絵本
    37行  赤ちゃん絵本、物語創作絵本、昔話・民話絵本、詩・ことばあそび絵本、知識の絵本などをいう。文字や言葉
    38行 がわからない時期から、絵本によって身の回りの事物や社会について知ることができるという特性がある。
    39行 (2)伝承文学
    40行  昔話、民話、伝説、神話、英雄譚などをいう。昔話や民話などは、独特のはっきりした形式上の特徴もあり、
    41行 子どもからお年寄りまでも惹き付けるという特性がある。
    42行 (3)児童文学
    43行  一般的に、子どもを読書対象とする文学を総称して児童文学と呼び、幼年文学と児童文学がある。幼年文学は
    44行 、子どもが主人公に同化したり、お話を聞いても心地よく容易に想像を膨らませていったりできる特性がある。
    45行 日本の現代児童文学は、散文的なことばで子どもをめぐる状況を描いている特性がある。
    46行 (4)詩・ことばあそびなど
    47行  詩は言葉に秘められた思いや味わいが感じられ、リズムがあり、韻を踏んだりしている特性がある。ことばあ
    48行 そびには、早口言葉、尻取り、回文などがある。
    49行 (5)ノンフィクション
    50行  ノンフィクション文学、知識の本、参考図書などがある。実際にあった話であるから、物語文学であっても臨
    51行 場感が感じられるという特性がある。
    52行 (6)その他の資料
    53行  紙芝居、しかけ絵本、布絵本、点字絵本、漫画、逐次刊行物、視聴覚資料などがある。  
    54行 
    55行 四 児童資料を利用する場と方法
    56行 (1)おはなし会
    57行  おはなし会は、各地域の図書館でおはなしの部屋を設けたりして実施されている。おはなしの内容としては、
    58行 創作のお話、神話、伝説、英雄物語、昔話・民話、おとぎばなし、絵本や詩などから選ばれたものなどが多い。
    59行 おはなし会で行われる読み聞かせでは、絵本がもっとも多く利用されている。また紙芝居も利用され、紙芝居を
    60行 行う人は演者となり、感情移入して読まれる。
    61行 (2)ブックトーク
    62行  ブックトークとはあるテーマに基づいて数冊の本を紹介していく読書技法のことである。図書館のフロアや貸
    63行 出カウンターなどで一人一人の子どもに本を紹介したり、あらかじめテーマを設けて本を集め、複数の子どもを
    64行 対象に、それらの本を順序よく紹介したりする。
    65行 (3)その他
    66行  年齢別のお薦めの本のリストを作成したり、調べ学習用のパスファインダーを準備したりして、子どもたちの
    67行 読書活動や調べ学習を支援し、テーマ展示、新刊書コーナー、目録・牽引づくりなど、子どもたちの読書活動や
    68行 調べ学習を支援する。
文字数 2079文字
添付
参考
文献
金沢みどり著『児童サービス論』学文社2012年 978-47620-2305-7
辰巳義幸編著『児童サービス論』東京書籍1998年 4-487-71482-6
堀川照代編著『児童サービス論』日本図書館協会2009年 978-4-8204-0821-5
望月道浩他著『児童サービス論』学文社2015年 978-4-7620-2197-8

講評

設題①の読書の意義はテキストのP.1を参考にすることと、図書館における児童サービスの重要性は、テキストの「児童サービスの理念」「児童サービスの意義」を参考にすることですが、ここはこれでよいです。要点を押さえています。

設題②の「児童資料の種類と特性」はテキストの4章を、「児童サービスの実践」はテキストの5章を参考にすることですが、ここもこれでよいです。幅広い視点から述べています。

これで合格です。今後も精進して頑張ってください。


総評: 合格