情報資源組織論

設題 指定したキーワードをすべて使って、各設問の解答を完成させてください。
1.現在、多くの公共図書館大学図書館で、外部の書誌データを利用した目録作成業務が行われています。集中目録作業と分担目録作業(=共同目録作業)、それぞれの特徴(意味や役割、課題など)を明確にし、さらに今後の目録作成業務のあり方について自らの見解をまとめてください。(1,000字)
<キーワード:MARC、集中目録作業、分担目録作業、総合目録、書誌ユーティリティ>
解答
      1行 一 はじめに
      2行  図書館では、収集する資料の選択やレファレンスサービスなどで、書誌情報が活用される。書誌情報は、目録
      3行 の作成にも利用され、多くの図書館においてコンピュータ目録が採用されている。書誌情報を一定のフォーマッ
      4行 トにより、コンピュータで処理できるような媒体に記録することを機械可読目録作業(MAchine  Rea
      5行 dable  Cataloging:MARC)と呼ぶ。図書館は、MARCから書誌情報をコピーし、自館の
      6行 蔵書データベースに登録することにより、目録を作成する。このような目録作成作業には、集中目録作業と分担
      7行 目録作業がある。
      8行 
      9行 二 集中目録作業
    10行  1つまたは少数の図書館が集中して目録作業をおこなうことを集中目録作業という。他の複数の図書館は当該
    11行 目録を利用することができる。目録作業をおこなう図書館のレベルが同じであれば、作業の質を維持することが
    12行 可能である。
    13行  しかし、特定の図書館が目録を作成している以上、それを利用する図書館は作成を待たなければならないこと
    14行 になる。この場合、新書の購入と目録の利用にタイムラグが生じることが問題となる。
    15行 
    16行 三 分担目録作業(共同目録作業)
    17行  複数の図書館が協力、分担して目録作業をおこなうことを分担目録作業または共同目録作業という。こうして
    18行 作成された目録は複数の図書館の資料を対象としているため、総合目録となる。分担目録作業においては、複数
    19行 の図書館が目録作業をおこなうので作業の質を均一化することが非常に重要となる。そのため、当該図書館の作
    20行 業実務を適切に関する組織が必要となり、それを「書誌ユーティリティ」と呼んでいる。
    21行  目録作業の質を保つことができたとしても、当該目録作業の量が複数の参加図書館により異なることが予想さ
    22行 れる。作業を積極的におこなう図書館もあれば、ほとんどおこなわず他の図書館にたよってしまう図書館が発生
    23行 するという問題がある。
    24行 
    25行 四 今後の目録作成業務のあり方
    26行  公共図書館では、図書館流通センターによる「TRC MARC」が広く用いられており、集中目録作業が普
    27行 及している。一方、分担目録作業は大学や研究機関の図書館で多く採用されている。集中目録作業であれ分担目
    28行 録作業であれ、その本来の目的は利用者が資料を探す時間をできるだけ節約することである。今後、新たな技術
    29行 が導入され、利用者にとって有意義に資料を検索できる目録システムを探求していくことが非常に重要である。
文字数 999文字
添付
参考
文献
榎本裕希子他著『情報資源組織論』学文社2012年 978-4-7620-2193-0
柴田正美他著『情報資源組織論 三訂版』日本図書館協会2020年 978-4-8204-1915-0
木原通夫他著『分類・目録法入門 新改訂第6版』第一法規2020年 978-4-474-06954-1
志保田務他著『情報視点組織法 第3版』第一法規2021年 978-4-474-07255-8

設題 2.地域の図書館(公共図書館)での現地調査もしくは調査対象館のHPの蔵書検索により、「蔵書の所在記号(背ラベル)の付与のしかた」について複数ケースを洗い出し、気づいたことをまとめてください。さらに、調査で得た内容や関連情報をもとに、書架分類と書誌分類という二つの点から、NDCの分類(記号)を活用することの意義や課題について考察してください。尚、調査対象館は“NDCを採用する近隣の公共図書館”で、取り扱う情報資源は“紙資料”とします。(1,000字)
<キーワード:書架分類、書誌分類、目録、配架(テキストでは排架を使用)、所在記号>
解答
      1行 一 はじめに
      2行  図書館では、主題などに基づいて資料を体系的に配架し、利用者が必要とする資料を自ら検索できるようにし
      3行 てる。この資料の分類方法を書架分類法という。当該分類にあたり日本では『日本十進分類法(Nippon 
      4行 Decimal  Classification:NDC)』が広く採用されている。このことについて、千葉
      5行 市図書館のHPの蔵書検索により、「蔵書の所在記号(背ラベル)の付与のしかた」について調査したので、以
      6行 下に記載する。
      7行 
      8行 二 千葉市図書館での蔵書検索結果
      9行  書名を「生涯学習」として検索してみた。資料の所在記号は、書架分類記号、図書記号および補助記号から構
    10行 成されるが、著者名・書名・出版社とともに実際の資料の背ラベルに書き込まれていた書架分類記号を以下に記
    11行 載した。
    12行  1 南里悦史編著『あすへの生涯学習と地域づくり』光生館 379//
    13行  2 小倉美津子著『生きてるかぎり学びたい』PHP研究所 914.6/オグ/
    14行  3 加藤恭子著『英語が楽しい』春秋社 830.4/カト/
    15行     上記資料の書架分類記号は379が社会教育、914が評論.エッセイ.随筆、830が英語である。「生
    16行 涯学習」という書名検索をしても、異なる書架分類記号が付された資料がみつかった。これはそれぞれの資料の
    17行 主題によって、配架位置が分かれていることをあらわしている。
    18行  また、書名を「ももたろう」として検索してみた。
    19行  4 いもとようこ文・絵『ももたろう』岩崎書店 E/イモ/
    20行  絵本等の資料は、NDCを使用しておらず、絵本コーナーの著者名の頭文字がイモのグループに別置されてお
    21行 り、探しやすいように工夫されている。
    22行 
    23行 三 NDC分類(記号)を活用することの意義や課題
    24行  NDC分類はすべての資料を10種類に区分けして、さらに上下にも階層をもち細分化していくので、分類構
    25行 造が把握しやすく非常にわかりやすい。これを書架分類に活用しているので、配架された資料の検索にあたって
    26行 は明瞭である。しかし、資料の主題は必ずしも特定の1種類により検索されるものではない。今回の千葉市図書
    27行 館の蔵書検索においても「生涯学習」に関係する資料が3つの場所に配架されている。通常、生涯学習に関係す
    28行 る資料を探す場合は、379の社会教育をあたるのではないだろうか。そこで、書架分類だけでなく、資料の目
    29行 録作成を重視した、同一の資料に複数のNDCを付与できる書誌分類も併せて活用する必要がある。
文字数 1004文字
添付
参考
文献
榎本裕希子他著『情報資源組織論』学文社2012年 978-4-7620-2193-0
柴田正美他著『情報資源組織論 三訂版』日本図書館協会2020年 978-4-8204-1915-0
木原通夫他著『分類・目録法入門 新改訂第6版』第一法規2020年 978-4-474-06954-1
志保田務他著『情報資源組織法 第3版』第一法規2021年 978-4-474-07255-8

講評

要約した場合も引用にあたりますので、どの部分をどの文献から引用したのか、明確に区別できるよう記述できているとより良いです。


総評: 合格


図書館情報資源特論

設題 ※どちらかを選んで回答してください。
※選択した番号を本文に記載してください。
※ 2023 年6 月30 日までにテキストを購入された方(伊東先生テキスト)は①
2023 年7 月 1 日以降にテキストを購入された方(竹田先生テキスト)は②
を選択してください。

灰色文献とはなにか、灰色文献の定義や意義、特性について記述してください。
また、灰色文献と言われる具体的な資料名を挙げて、その資料の特徴について
も説明してください。

公共図書館が地域資料を収集するのはなぜかを考え、地域資料サービスの実践
例やデジタルアーカイブ化について自分の言葉で論じてください。
解答
      1行 一 灰色文献の定義や意義、特性
      2行  灰色文献とは、一般の商業出版ルートでは入手が困難な文献をいう。灰色文献は、少部数で配布先が限定され
      3行 ているとか所在確認や入手が極めて困難な文献である。通常の出版物の流通経路を通らないなため配布が限定さ
      4行 れているため、入手が困難である。2010年の第12回灰色文献国際会議においてプラハ定義と呼ばれるもの
      5行 があり、そこでは「知的財産権により保護された紙や電子のフォーマットで、政府、大学、ビジネス、産業のあ
      6行 らゆるレベルにおいて生み出される多様なドキュメント形態で、図書館所蔵や機関リポジトリで収集、保存され
      7行 る十分な質をもつものを表す。しかし、商業出版社によってコントロールされているのではない。主たる活動が
      8行 出版を本業としない組織によってコントロールされている。」と定義されている。
      9行  灰色文献をこのように定義し、他の文献と区別する意義は、近年、インターネットの普及から、灰色文献のか
    10行 なりの部分が印刷されずに、それぞれのホームーページに掲載されるようになったので、図書館の立場からする
    11行 と、このような情報をいかにキャッチし、所持していくかということが大きな課題のひとつとなっているからで
    12行 ある。
    13行  灰色文献は、流通経路が不明確で、少部数しか作成されていない、配布先が限定されているなどの特性を有し
    14行 ている。本や雑誌は書店で販売しているものばかりではなく、一般の出版物の流通ルートにのらない種類の本が
    15行 たくさんある。このような灰色文献資料は発行部数が少ないため、後から入手しようとしても用意には見つから
    16行 ない。また、インターネットの普及により、たくさんの情報や資料がインターネット上で公開されアクセスしや
    17行 すくなっているが、それらはインターネット上で閲覧やダウンロードができる状態にあるだけで、未来永久的に
    18行 アクセス可能なわけではない。
    19行 
    20行 二 灰色文献といわれる具体的な資料名とその資料の特徴
    21行 1 テクニカルレポート
    22行  テクニカルレポートとは、もともとアメリカが国家規模の研究計画に対して、その研究成果を一定の形式で研
    23行 究助成機関に報告する義務を課したことからはじまった情報技術の伝達手段である。日本でも政府機関や専門研
    24行 究機関において、さまざまな調査研究や委託研究がおこなわれ、成果報告書がかんこうされるが、それは、研究
    25行 成果としての技術情報を組織内に伝達する形式のひとつとしてテクニカルレポートとみなされる。
    26行  テクニカルレポートの特徴は、雑誌のような査読制度はなく、内容に応じて長さや形式が自由な1件1論文の
    27行 報告書となっている。配布は組織内に限定されている。
    28行 2 学位論文(博士論文)
    29行  学位を取得するために書かれた論文をいい、提出された大学で審査をうける。学位制度は国によって異なるが
    30行 、日本では、学位論文は独創性や先行研究、重要文献のレビューなどを踏まえた新しい知見がえられるので、分
    31行 野によっては、一次資料として価値が高い。
    32行  学位論文の特徴は、流通を目的としていないので、利用する機会に恵まれないが、提出先の大学と国立国会図
    33行 書館が所蔵しているので、閲覧することはできる。
    34行 3 会議資料
    35行  会議には、国内外の学会、大会、研究集会、シンポジウム、講演会などさまざまな形式がある。参加者だけに
    36行 配布されるプログラムや予稿集、発表などは速報性があり、学術動向などを知るうえで貴重な情報源となる。
    37行  会議資料の特徴は、一般に配布されないので、情報の入手は難しく、後日、発表論文等を掲載した会議録が公
    38行 刊されることもある。
    39行 4 紀要
    40行  大学や研究機関から主として学術論文や研究発表を掲載し、年1回程度刊行される機関誌をいう。
    41行  紀要の特徴は、学内の研究成果の発表の場と化しており、公立図書館では、地域の大学紀要などを収集してい
    42行 るが、読者が限定されているので利用は少ない。
    43行 5 政府刊行物
    44行  国および地方自治体の公文書、調査報告書、審議会資料をはじめ政府や助成金による研究調査・報告書などの
    45行 総称である。
    46行  政府刊行物の特徴は、政策方針の決定や動向に大きな影響を与える資料として、市民の注目を集めているが、
    47行 当局や発行者側には、情報公開の意識が脆弱なため、市販されているものはともかく、一般的入手方法は困難さ
    48行 を増している。
    49行 6 企業文献
    50行  企業が社内や消費者を対象にイメージを高めるために刊行する資料群の総称である。
    51行  企業文献の特徴として、社史、広報誌、製品カタログなどは、レファレンスツールとして役立つ。
    52行 7 その他
    53行  1~6までの資料のほか、翻訳文献や特許資料も灰色文献に該当する。
    54行  翻訳文献の特徴は、難解な言語で書かれた図書や雑誌論文の翻訳文献は、どこでどのように翻訳され、発表さ
    55行 れ、保存されているのか見えにくい。また、特許資料の特徴として、出願人が作成した特許明細書、特許庁が発
    56行 行する公開公報と広告公報などが利用対象となる。
    57行 
    58行 三 まとめ
    59行  灰色文献は、入手可能性が高くないが、その資料価値は高いものも多くある。よって、図書館は住民の知る権
    60行 利を保障するため、積極的に収集する必要がある。
文字数 2065文字
添付
参考
文献
池田貴儀著「問題提起:灰色文献定義の再考」情報の科学と技術62巻2号50頁 2012年
池田貴儀著「インターネット時代の灰色文献 灰色文献の定義の内容とピサ宣言を中心に」情報管理Vol.58 no.3 193頁 2015年
井上真琴著『図書館に訊け!』ちくま新書 2008年 4-480-06186-X
馬場俊明著『図書館情報資源概論』日本図書館協会 2012年 978-4-8204-1217-5
伊藤民雄著『図書館情報資源概論』学文社 2012年 978-4-7620-2304-0
宮沢厚雄著『図書館情報資源概論 新訂第4版』理想社 2018年 978-4-650-01093-0

講評

灰色文献の定義や特徴ついて記述できています。
近年の灰色文献は、一部ウェブで公開されているものもあります。
どのようなデータベースで閲覧できるのか調べて具体的に記述するとさらに良くなったでしょう。
 


総評: 合格


図書・図書館史

設題 日本または西洋のどちらかを選び、それぞれの時代(古代、中世、近世、近代以降)の図書館発展の特徴をコンパクトに要約し、かつ私見(400字程度のまとめ)を述べてください。
解答
      1行 1 はじめに
      2行  日本の図書館史について、図書館発展の特徴を古代、中世、近世、近世以降にわけて以下に記載する。
      3行 
      4行 2 古代
      5行  わが国への漢字と書物の伝来は4、5世紀ころで、情報伝達媒体である紙や墨、さらに仏教などもこのころ伝
      6行 来した。仏教や儒教の伝来は、仏典や漢籍をわが国にもたらし、それらを保管する入れ物である経蔵や文庫の発
      7行 生を促すことになった。書写された仏典や文献は、仏教の精髄を伝える貴重なものとして経蔵が設置され、経典
      8行 専門書庫となった。
      9行  また、『古事記』『日本書紀』『風土記』などの国史編纂のほかに、行政関係文書や諸記録物が大量に生み出
    10行 されてくると、それらを収集・保管する機関として図書寮が登場した。図書寮以外にも、官設の文書保管機関と
    11行 して各官司および内裏、院、摂関家、幕府などに設置された政府の記録庫である文殿があった。
    12行  さらに、国風文化の発達は、かな文字の成立により、『伊勢物語』『枕草子』『源氏物語』などの文学の発達
    13行 を促し、書物の量も増して、貴族の間で学問研究のための文庫を邸内に設けた石上宅嗣芸亭菅原道真の紅梅
    14行 殿などがあった。
    15行 
    16行 3 中世
    17行  中世と呼ばれる鎌倉時代南北朝時代室町時代は、武家勢力が浸透し、封建制度が確立された。
    18行  鎌倉時代のなかごろ、北条実時によって金沢文庫が設けられた。実時の学問は政治、法制、軍事、文学など広
    19行 範囲に及び、それらを学んだ書物が文庫の基礎をなした。実時によって基礎を培われた文庫は、その子顕時、孫
    20行 の貞顕によって発展し、漢籍や国書など広い分野にわたり収集された。その利用には規定があって、公開的な図
    21行 書館ではなく、むしろ金沢氏個人の文庫の性格が強く、一部の関係者、特に僧侶の利用に限定されていた。
    22行  室町時代には、足利学校武家への助言者を養成する機関として栃木県足利市に造られた。足利学校の文庫は
    23行 、武人から多くの図書が寄進され、儒学関係特に易学の典籍は豊富であった。図書利用に関しては、貸出は禁止
    24行 、閲覧は1冊に限定、書き込み・切り抜きの禁止などがあった。
    25行 
    26行 4 近世
    27行  江戸時代、徳川氏の権力は絶対的なもので、鎖国体制のもとでペリー開国まで、比較的天下泰平の時代が続い
    28行 た。
    29行  徳川幕府の最初の文庫として最初に設置されたものに富士見亭文庫があり、わが国最初の官立図書館で、幕府
    30行 の参考図書館である。大名文庫では、尊経閣文庫や佐伯文庫、朝廷や公家の文庫として、東山御文庫、近衛家
    31行 庫などがある。
    32行  また、幕府護持のための封建制度の維持発展の支えとして、幕府の直轄学校である昌平坂学問所がある。これ
    33行 は当時における最高学府として、その文庫も、他の学校に対して常に優位に置かれ、中央図書館的な機能を果た
    34行 していた。
    35行  さらに、庶民の読書機関としての図書館も出現するようになった。医家であった板坂ト斎は江戸浅草に私有の
    36行 浅草文庫を開いて、一般に公開した。江戸時代最初の公開図書館であり、医書を多く蔵したが、和漢の一般の書
    37行 にも富み、諸衆の閲覧に供していた。仙台藩が公費で運営、一般庶民に公開した青柳館文庫は、図書の帯出制度
    38行 も行われて、管理運営は近代図書館のそれとほとんど変わらなかった。
    39行 
    40行 5 近代以降
    41行  明治時代、『西洋事情』によって福沢諭吉は、西洋の図書館が如何なるものかに触れて明治期の図書館運動
    42行 出発点として影響を与えた。その後、わが国官立公共図書館の創始であり、国立国会図書館の源流である書籍館
    43行 が発足した。また、京都府が近代公共図書館の先駆けとなる集書院を新築し、経営を集書会社に委託し、公設民
    44行 営の図書館が開設された。
    45行  明治32年、日本で初めて図書館の法律である図書館令が公布された。図書館令の公布が契機となって、その
    46行 後の図書館の設置が全国的に波及した。戦後の昭和25年、社会教育法の精神に基づき図書館法が制定され、司
    47行 書の職務規定と資格、図書館奉仕など新しい公共図書館のあり方が示された。さらに、昭和38年の中小レポー
    48行 トの刊行を経て、公共図書館での貸出サービスは当りまえのことと認識されるに至っている。
    49行 
    50行 6 おわりに
    51行  図書館の歴史を古代から近代以降にわたって学習した。図書館は経典保管庫である経蔵から始まり、現在に至
    52行 ったわけだが、いつの時代も時代の権力と民間の両方でそれぞれ進化しているように思う。最初は単なる保管庫
    53行 であったものが、さまざまな書物が扱われるようになり、公開もされるようになった。しかし、利用が一部の身
    54行 分の者に限定されていたり、貸出が制限的であった時代もあり、現在のように無料での貸出やどこに住んでも地
    55行 域の図書館を利用できるような状態は、本当に最近のことなんだと思った。
    56行  図書館自体のサービスの進化はこれからも続き、もっとよりよいものを追求していく必要がある。近年はイン
    57行 ターネットの普及によって、無形の情報も存在し、世界ももっと身近なものになっている。もしかしたら図書館
    58行 の発展はまだまだ進化の途中であり、もっともっとグローバルな展開が待っているのかもしれない。そのために
    59行 私たちは日々の研鑽を怠らないようにしなければならいと思う。
文字数 2072文字
添付
参考
文献
小川徹他編『補訂版 図書館史 近代日本篇』教育史料出版社2003年 4-87652-438-6
石井敦編『図書および図書館史』雄山閣1990年 4-639-00968-2

講評

提出お疲れ様です。
設題のポイントをしっかり押さえ、日本の図書館史を大変分かりやすくまとめられています。特に初期の図書館が限られた特権階級のためのものだったのに対し、現代の誰でも自由に使えるものに変化してきたことを理解している内容であり秀逸でした。欲を言うと製紙技術や印刷技術の向上により、図書の流通量が時代の下るにつれて増加し、市井の人まで読書ができるようになり、出版文化や貸本業が隆盛となることも踏まえて書いて欲しかったです。これが現在の誰でも使える図書館の前提になっています。以上を念頭に置き、もう一度テキストを読み返してみてください。製紙技術や印刷技術の向上が図書・図書館の発展史の骨格になっていることがよく分かってくると思います。私見は納得できる内容でした。
引き続き頑張ってください。


総評: 合格


図書館情報資源概論

設題 公共図書館が収集するネットワーク情報資源の種類や特徴、提供事例について述べてください。また、若い世代に対して情報資源の利用をどのように広報・PRしていくべきかあなた自身の考えを含め、論じてください。
解答
      1行 一 ネットワーク情報資源の種類と特徴、提供事例
      2行  近年、コンピュータおよびインターネットの発展により、ネットワーク情報資源が身近なものになったといえ
      3行 る。ここで、ネットワーク情報資源とは、日本図書館情報学会用語辞典編集委員会によると「インターネットを
      4行 基盤とするコンピュータネットワークを介して探索、入手、利用可能な情報資源」をいう。具体的にどのような
      5行 ものがあるか以下に記載する。
      6行 1 有料・無料データベース
      7行  雑誌記事、辞書・事典、新聞記事、過去のウェブサイト等を閲覧利用できるデータベースで、有料のものと無
      8行 料のものがある。有料データベースは、図書館が契約しユーザーIDとパスワードを入力して利用できる。官公
      9行 庁系が提供しているデータベースには、無料データベースが多い。
    10行  2009年の著作権法第31条第2項新設により、国立国会図書館が所蔵する資料を保存する目的でのデジタ
    11行 ル化が可能となり、これらの資料を国立国会図書館デジタルコレクションとして確認できるようになった。一部
    12行 は申請することで閲覧、または法律により制限のかかっている資料は公共図書館でのみ閲覧が可能となっている
    13行 
    14行 2 電子ジャーナル
    15行  電子ジャーナルとは、日本図書館情報学会用語辞典編集委員会によると「従来は印刷物として出版されていた
    16行 雑誌、とりわけ学術雑誌と同等の内容を、電子メディアを用いて出版したもの」と定義されている。出版後すぐ
    17行 に利用者のもとに届けることができ、過去の膨大な数の論文を一括して検索することができるという利点をもつ
    18行 
    19行  提供事例としては、神奈川県立川崎図書館でTaylor&Francis社が1996年以前に刊行した化
    20行 学、物理、数学・統計学分野の雑誌などを閲覧できる。
    21行 3 電子雑誌・書籍
    22行  電子雑誌とは、商業雑誌などをオンライン上で読むことができる雑誌のことである。近年のコミックやファッ
    23行 ション雑誌は、紙媒体と並行して出版しいる。また、電子書籍とは、PCや汎用タブレット端末、電子書籍リー
    24行 ダーなどのデバイスで閲覧フォーマットを用いて、ネットワーク上のデジタルデータを読むことができるものを
    25行 いう。現在の電子書籍のほとんどは、インターネット経由でデータをダウンロードまたはデータにアクセスする
    26行 タイプのものである。
    27行  この最初の提供事例は、2002年北海道・岩見沢市図書館であり、当初、電子化された岩波文庫の109作
    28行 品を館内で自由に読むことができるサービスを実現した。これは、図書館内の専用端末での閲覧であったが、近
    29行 年、非来館型サービスの一つとして、ネットワークを介して電子書籍を貸出することが一般的になってきた。2
    30行 007年11月、東京都・千代田区立図書館では、千代田Web図書館を開始した。これは初めて非来館型サー
    31行 ビスとして、インターネット上で貸出・閲覧できる電子書籍の貸出サービスであり、学習系や語学学習用のオー
    32行 ディをブックなど約4,000タイトルを提供した。また、関西圏では大阪府堺市立図書館が電子書籍サービ
    33行 スを始め、約1,100タイトルを提供した。
    34行 4 音楽配信サービス
    35行  音楽配信サービスとは、インターネットの普及により、ネットワークを介して音楽をデジタルデータで配信す
    36行 るサービスである。
    37行  このサービスを公共図書館で最初に取り入れたのは、2008年2月の岐阜市立図書館である。続いて200
    38行 8年9月に岐阜県高山市図書館が導入している。このサービスを導入することで利用者に対して約100万曲
    39行 を提供することができる。
    40行 5 デジタルアーカイブ
    41行  デジタルアーカイブとは、原資料を所蔵している所蔵館や提供元が有形・無形の文化資源をデジタル化し、ネ
    42行 ットワーク上に保存した保管庫のことである。
    43行  提供事例としては岡山県立図書館のデジタル岡山大百科がある。また、大阪府豊中市立図書館と箕面市立図
    44行 書館の地域情報のアーカイブである北摂アーカイブスがある。このデジタルアーカイブのコンテンツ収集方法は
    45行 、住民が所有する写真の提供・協力によって成り立っている。
    46行 
    47行 二 情報資源の利用をどのように広報・PRしていくべきか
    48行  若い世代はインターネットの普及により、YouTube、Twitter、Facebook、Insta
    49行 gramなどによる情報発信を含め、パソコンやスマートフォンの利用が当たり前の状態になっている。このよ
    50行 うな情報環境においては、ネットワーク情報資源について抵抗があまりないと思われる。よって、図書館は紙資
    51行 料だけではなく、電子雑誌・書籍をはじめとするネットワーク情報資源も豊富に存在するということをアピール
    52行 する必要がある。
    53行  また、若い世代のうち図書館にあまり来館することのない人たちにとって、ネットワーク情報資源は非常に有
    54行 効であるといえる。ネットワーク情報資源の提供は、非来館型サービスの一環として、もっと広報・PRしてい
    55行 くべきである。 
    56行  さらに、図書館になじみのない若い世代で、読み・書きに困難を抱える者についても、点字・録音資料やDA
    57行 ISY等のほか、音読機能のある電子書籍のようなネットワーク情報資源の存在を知らしめるべきであろう。
文字数 2089文字
添付
参考
文献
伊藤民雄著『図書館情報資源概論』学文社2012年 978-4-7620-2304-0
藤田岳久編著『図書館情報資源概論』学文社2016年 978-4-7620-2198-5
馬場俊明編著『図書館情報資源概論』日本図書館協会2012年 978-4-8204-1217-5

講評

1,2,3と見出しについて順序立てて記述できています。具体的な公共図書館デジタルアーカイブ事例を示している点を評価します。もう少し内容に展開があれば良くなります。


総評: 合格


児童サービス論

設題 ①児童サービスにおける読書の意義と役割について述べ、また図書館における児童サービスがなぜ重要であるかを述べなさい。
②児童資料の種類と特性について述べ、児童サービスの実践においてそれらの資料をどのような場でどのように生かすべきかを述べなさい。
解答
      1行 一 児童サービスにおける読書の意義と役割
      2行  子どもの読書は、言葉、感性、表現力、創造性にとって良いものであり、人生をより深く生きる力を身に付け
      3行 るという意義がある。読書がどのような役割をはたすか、以下に記載する。
      4行 
      5行 1 発達における読書の役割
      6行  読書によって、実物ではないシンボルによって現実の世界にあるものを表すことができることを知ることによ
      7行 り、その後の精神世界が格段に広がっていくことがいえる。また、他者を他者として認識するようになり、その
      8行 ことが翻って自分を再認識し、自我の形成に役立つ。
      9行  また読書には、現実では体験できないことを読書によって体験する、仮想体験の意義がある。これにより感情
    10行 が揺り動かされ、人間性を豊かにする効果が期待できる。書かれていることを読み取り理解したうえで、自分な
    11行 りの解釈や意味付を行うことで、より意義のある人生を送る糧となる。
    12行   
    13行 2 学習における読書の役割
    14行  読書において単語が何を表しているかは、遭遇した場面について、いっしょにいた親が「優しいね」などと言
    15行 葉で表現したり、ある行為を「優しい」と表現している場面に遭遇することで、少しずつ「優しい」という単語
    16行 とその用法を覚えていく。
    17行  仮に読書中、知らない単語が出てきても、前後関係から推測することで理解し、記憶することができる。一度
    18行 誤解した語についても、その後別の場面で使用されているものを読むことで正しい理解に修正されることもある
    19行 
    20行  
    21行 二 図書館における児童サービスの重要性
    22行  図書館における児童サービスは、子どもと本を現時点で結びつけることであると同時に、その子どもが生涯に
    23行 わたって読書し学習していく基盤を作るという縦のつながりもあり非常に重要な役割を担っている。児童が読む
    24行 本をすべて家庭で用意するのは経済的に負担であるので、公共図書館を利用することで負担を軽減でき、子ども
    25行 はどのような本があるのかということを知らないので、目の前にいろいろな本が並んでいるとその中から選ぶこ
    26行 とができるので、視野を広げることができる。
    27行  また、住んでいる地域やその人の経済状況によって得られる情報に格差がでないように、公共図書館が情報を
    28行 収集し、情報を得る手段を提供し、知る権利を保障しており、子どもが市民として活動して行けるようになるた
    29行 めに、適切な情報を提供する必要がある。
    30行  さらに、児童は図書館の本を他人も使用することがあるので、自分の本以上に大切に扱わなければならないと
    31行 いう社会の一員としての公共性を学ぶ機会となる。
    32行 
    33行 三 児童資料の種類と特性
    34行 1 児童資料の種類
    35行  児童資料とは児童のための資料であり、児童資料の種類には次のものがある。
    36行 (1)絵本
    37行  赤ちゃん絵本、物語創作絵本、昔話・民話絵本、詩・ことばあそび絵本、知識の絵本などをいう。文字や言葉
    38行 がわからない時期から、絵本によって身の回りの事物や社会について知ることができるという特性がある。
    39行 (2)伝承文学
    40行  昔話、民話、伝説、神話、英雄譚などをいう。昔話や民話などは、独特のはっきりした形式上の特徴もあり、
    41行 子どもからお年寄りまでも惹き付けるという特性がある。
    42行 (3)児童文学
    43行  一般的に、子どもを読書対象とする文学を総称して児童文学と呼び、幼年文学と児童文学がある。幼年文学は
    44行 、子どもが主人公に同化したり、お話を聞いても心地よく容易に想像を膨らませていったりできる特性がある。
    45行 日本の現代児童文学は、散文的なことばで子どもをめぐる状況を描いている特性がある。
    46行 (4)詩・ことばあそびなど
    47行  詩は言葉に秘められた思いや味わいが感じられ、リズムがあり、韻を踏んだりしている特性がある。ことばあ
    48行 そびには、早口言葉、尻取り、回文などがある。
    49行 (5)ノンフィクション
    50行  ノンフィクション文学、知識の本、参考図書などがある。実際にあった話であるから、物語文学であっても臨
    51行 場感が感じられるという特性がある。
    52行 (6)その他の資料
    53行  紙芝居、しかけ絵本、布絵本、点字絵本、漫画、逐次刊行物、視聴覚資料などがある。  
    54行 
    55行 四 児童資料を利用する場と方法
    56行 (1)おはなし会
    57行  おはなし会は、各地域の図書館でおはなしの部屋を設けたりして実施されている。おはなしの内容としては、
    58行 創作のお話、神話、伝説、英雄物語、昔話・民話、おとぎばなし、絵本や詩などから選ばれたものなどが多い。
    59行 おはなし会で行われる読み聞かせでは、絵本がもっとも多く利用されている。また紙芝居も利用され、紙芝居を
    60行 行う人は演者となり、感情移入して読まれる。
    61行 (2)ブックトーク
    62行  ブックトークとはあるテーマに基づいて数冊の本を紹介していく読書技法のことである。図書館のフロアや貸
    63行 出カウンターなどで一人一人の子どもに本を紹介したり、あらかじめテーマを設けて本を集め、複数の子どもを
    64行 対象に、それらの本を順序よく紹介したりする。
    65行 (3)その他
    66行  年齢別のお薦めの本のリストを作成したり、調べ学習用のパスファインダーを準備したりして、子どもたちの
    67行 読書活動や調べ学習を支援し、テーマ展示、新刊書コーナー、目録・牽引づくりなど、子どもたちの読書活動や
    68行 調べ学習を支援する。
文字数 2079文字
添付
参考
文献
金沢みどり著『児童サービス論』学文社2012年 978-47620-2305-7
辰巳義幸編著『児童サービス論』東京書籍1998年 4-487-71482-6
堀川照代編著『児童サービス論』日本図書館協会2009年 978-4-8204-0821-5
望月道浩他著『児童サービス論』学文社2015年 978-4-7620-2197-8

講評

設題①の読書の意義はテキストのP.1を参考にすることと、図書館における児童サービスの重要性は、テキストの「児童サービスの理念」「児童サービスの意義」を参考にすることですが、ここはこれでよいです。要点を押さえています。

設題②の「児童資料の種類と特性」はテキストの4章を、「児童サービスの実践」はテキストの5章を参考にすることですが、ここもこれでよいです。幅広い視点から述べています。

これで合格です。今後も精進して頑張ってください。


総評: 合格


情報サービス論

設題 大学図書館における利用指導の内容7点を挙げ、それぞれについて簡潔に述べた後、利用教育の手段についてはどうあるべきか、最近の動向にも配慮し、貴方自身の考え方を含め論じてください。
解答
      1行 一 序論 
      2行  大学図書館は、大学教育をより有用なものとするため、ある特定分野や主題に関する学術書や研究書を多く所
      3行 蔵している。この点は公共図書館と大きく異なる。そのため、大学図書館を利用する者が、それを利用する際に
      4行 、自らの作業課題のために必要な資料をいかにして探すかということについて、それを行うための知識が必要で
      5行 あり、その知識を提供することも大学図書館の役割ともいえる。よって、利用者が自らの意思で自分のために牽
      6行 引や内容目次などを利用することで、必要な資料を探し出せるようにする教育が必要となるのである。
      7行 
      8行 二 利用指導の内容  
      9行  大学図書館がもっている情報源の利用についての指導の方法としては次の7点があげられる。
    10行 1 オリエンテーション
    11行  大学図書館が行う学生に対する図書館施設および資料の配置、資料の貸出手続きなどの利用の説明を行う。
    12行 2 図書館ツアー
    13行  図書館内を実際に案内し、利用の方法やサービスの種類を説明していく。
    14行 3 OPAC検索・カード検索指導
    15行  図書資料の検索をコンピュータ端末で行うための利用法を説明する。コンピュータ化          さ
    16行 れていない場合はカード検索の利用方法を説明することになる。
    17行 4 文献探索法(文献調査法)
    18行  図書、雑誌、新聞記事などを探索する一般的文献探索法と、論文作成等のための特定の主題に関係して探索す
    19行 る主題別文献探索法がある。
    20行 5 コンピュータリテラシー教育
    21行  主にインターネットの利用など、パソコンから得られる情報の正しい使い方を教える教育である。現代のイン
    22行 ターネット社会においてはその重要性は増している。 
    23行 6 レポート・論文を作成するためのステップ指導
    24行  レポート・論文を作成する手順を説明する。その過程において、参考文献を利用した際の引用の仕方などを指
    25行 導する。
    26行 7 視聴覚機器やコンピュータ機器を使っての編集指導
    27行  レポート・論文を電子媒体での作成し提出する場合、パソコン上でのビデオ等の動画編集の仕方などを指導す
    28行 る。
    29行 
    30行 三 利用教育の手段
    31行  実際の利用教育の手段については次の3つのものの利用がある。
    32行 1 映像資料の利用
    33行  ①動画を利用する
    34行  市販のDVDを利用する。または、図書館独自で動画を作成する。
    35行  ②書画カメラ(教材提示装置)を利用する
    36行  書画カメラは、資料など主に平面の被写体をビデオカメラで撮影して、映像信号に変換する装置である。説明
    37行 しながら必要があれば図などを書いて補足できる。
    38行  ③スライドを利用する
    39行  パワーポイントを利用したスライド形式による説明が多い。
    40行 2 印刷物を利用する
    41行  ①テキスト
    42行  説明に必要な市販の教材をテキストとして使用する。
    43行  ②図書館案内・練習問題
    44行  図書館案内はふだん利用者に配布しているものを利用する。
    45行  ③プリント資料
    46行  図書館の立場から説明したいことを、臨機応変につめこんで作成する。独自の文章もあれば図書のコピーもあ
    47行 る。
    48行 3 パソコンを利用する
    49行  ネット環境を利用し、教育プログラムを作成し、個々人で時間にあわせて履修させることが可能である。
    50行  
    51行 四 まとめ
    52行  大学図書館の利用教育における最近の動向としては、学生がレポートや論文の作成にあたって、資料収集のた
    53行 めの図書館の利用について教育を受けることは効果的であるとされ、実際におこなわれている。データとしては
    54行 やや古いが、平成16年度東海地区の大学図書館がどのように利用教育をすすめているかを調査した結果(中村
    55行 康廣著「中京大学における図書館利用の推移と利用教育について」『中京大学図書館学紀要,2005』に掲載
    56行 )、新入生オリエンテーションについて89%が、ゼミ・ガイダンスについて71%が、その他の利用教育につ
    57行 いて図書館ニュース48%、希望者への利用教育59%が実施されているという内容であった。このことから、
    58行 大学図書館ではさまざまな利用教育がなされており、利用教育のない大学図書館は存在しないといってよいと思
    59行 われる。
    60行  現代はインターネットの普及もあり、高度な情報化社会である。図書館にある情報も多種多様化している。こ
    61行 のような状況において、大量の情報を十分に使いこなすには専門家が必要であり、その手助けにより情報の収集
    62行 にあたらなくてはならない。大学図書館は、公共図書館に比べて、レポートや論文の資料としてや専門分野に関
    63行 する調査のために利用することが多い。実際、レポートや論文を作成するより、先に知識として文献調査方法を
    64行 知っていたほうが、作成に当たって効率的である。また、必要な資料をいかにして探すかということは図書館の
    65行 利用に大きく関わってくるものである。さらに、レポートや資料を自分で探すことが、その過程でより有用な資
    66行 料に出会うきっかでとなることもあるので、利用教育は非常に重要であると考える。図書館で働く者は、利用教
    67行 育を行うことにより、大学での学びをより効率的なものにする援助ができるのである。
文字数 1992文字
添付
参考
文献
丸本郁子他編『大学図書館の利用者教育』日本図書館協会1989年 4-8204-8905-4
阪田蓉子編『情報サービス論 補訂版』教育史料出版会2003年 4-87652-427-0
竹之内禎編著『情報サービス論』学分社2013年 978-4-7620-2194-7
中村康廣著「中京大学における図書館利用の推移と利用教育について」『中京大学図書館学紀要,2005』2005年
日本図書館研究会編『大学生と図書館』日本図書館研究会1992年
日本図書館協会図書館利用教育委員会編『図書館利用教育ハンドブック』日本図書館協会2003年 4-8204-0230-7
日本図書館協会図書館利用教育委員会編『図書館利用教育ガイドライン合冊版』日本図書館協会2001年 4-8204-0115-7

講評

学習・理解はよくできています。論述内容、巻末文献の活用も評価できます。なお、最近の動向が弱くなっているのが残念です。


総評: 合格


図書館サービス概論

設題 身近な公共図書館都道府県立より、市町村立が望ましい)を観察し、このテキストに書いてあることと比較しつつ、その図書館の特徴を述べ、またあなたの具体的で実現可能な希望を列挙してください。
解答
      1行 1 はじめに
      2行  身近な公共図書館として、千葉市立稲毛図書館(所在地:千葉県千葉市稲毛区小仲台5-1-1)について観
      3行 察し、当該図書館の特徴を以下に記載する。
      4行 
      5行 2 収蔵・貸出状況
      6行  千葉市立稲毛図書館の所蔵資料数は、令和3年度で145,060点である。図書資料が141,501点(
      7行 一般書が111,199点、児童書が30,302点)、視聴覚資料が3,242点、紙芝居が317点という
      8行 内訳になっている。千葉市には、中央図書館のほか、当該図書館を含む6つの地区館がある。その中で所蔵資料
      9行 数は一番少ない。
    10行  年間の受入図書資料数は、令和3年度で1,776冊でうち869冊が寄贈である。受入数は前年に比べて4
    11行 51冊減少している。
    12行  所蔵資料貸出点数は、令和2年度で252,072点である。うち図書資料が244,806点、視聴覚資料
    13行 が7,266点である。これは千葉市内の図書館で4番目に多い。図書資料の貸出数を年度別に見ていくと、平
    14行 成28年度365,398冊、平成29年度361,344冊、平成30年度352,857冊、令和元年度3
    15行 44,342冊、令和2年度278,720冊、令和3年度244、806冊と年々減少傾向にある。
    16行  ちなみに、千葉市全体の人口1人当り資料数は2.74冊で他の政令指定都市(19市)と比べると3位で、
    17行 人口1人当り貸出数は3.60冊で他の政令指定都市と比べると10位である。
    18行 
    19行 3 基本サービス
    20行 (1)貸出・閲覧
    21行  千葉市内に居住しているか否かにかかわらず、利用カードを作成すれば、貸出が可能となる。貸出は、本・雑
    22行 誌・紙芝居が合計10冊まで、DVDが合計2点まで、CD・カセットテープが各2点までで、期間は2週間と
    23行 なっている。
    24行 (2)予約・リクエストサービス
    25行  さがしている資料がその図書館にないときは、予約ができる。貸出中などのときは、本・雑誌・紙芝居が合計
    26行 10冊まで、DVD・ビデオが合計4点まで、CD・カセットテープは各4点まで予約ができる。ただし、未所
    27行 蔵の資料は、千葉市に在住・在勤・在学の方のみリクエストが可能となっている。
    28行 (3)相互貸借
    29行  千葉市に在住・在勤・在学の方が未所蔵資料をリクエストした場合、県内の公共図書館、県立図書館、国立国
    30行 会図書館から取り寄せが可能である。ただし、本の貸出延長はできず、国立国会図書館からの資料については館
    31行 内閲覧のみとなっている。
    32行 (4)レファレンスサービス
    33行  稲毛図書館の参考資料スペースにおいて、参考図書、各種百科事典、政府刊行物、統計書、年鑑、新聞縮尺版
    34行 、地図、法令集を参照可能としている。当該スペースには閲覧席が5席用意されている。
    35行  また、調べたいこと、わからないことがあるときはカウンターに専用職員がおり、資料や情報をさがす手伝い
    36行 をしてくれる。
    37行 (5)複写サービス
    38行  カウンターに申込書を提出することで、稲毛図書館の資料に限り、著作権法の範囲内で有料でコピーできる。
    39行 (6)講座・その他事業
    40行  幅広い年齢層を対象に、郷土資料講座や美術講座をそれぞれ年1回開催している。読書祭りと称した催しを年
    41行 1回開催し、そのなかでリサイクルコーナーにて除籍本を無料配布している。
    42行 
    43行 4 対象別サービス
    44行 (1)児童サービス
    45行  毎週金曜日に定例おはなし会を開催している。また、児童展示を定期的に行っている。さらに、0~2歳児と
    46行 その保護者を対象にはじめてのおはなし会を開催し、今後のおはなし会参加につなげている。
    47行 (2)高齢者サービス
    48行  カラー拡大読書器の設置、ルーペの貸出、および大型本の提供を行っている。また、来館しなくても予約した
    49行 資料を自宅等で受け取ることのできる有料の宅配サービスも実施している。
    50行 (3)障害者サービス
    51行  かだが不自由で図書館に直接来られない方のために、希望する資料を自宅までお届けする宅配や郵送による貸
    52行 出サービスを無料で行っている。
    53行 (4)多文化サービス
    54行  ホームページに英語、中国語、韓国語の利用案内を掲載している。
    55行 
    56行 5 稲毛図書館への希望
    57行  稲毛図書館は図書資料の貸出数が年々減少傾向にある。要因として考えられるものに電子書籍サービスの普及
    58行 がある。令和3年度に開始された当該サービスは、開始時の提供コンテンツ数は約7,600点であったが、年
    59行 度末は8,866点に拡大した。図書館に来館しなくても貸出・返却が可能で、読み上げ機能にも対応している
    60行 ので、利用者には好評のようである。
    61行  とはいえ、令和3年以前からも図書資料の貸出数が減少していることを考えると別に要因があるはずである。
    62行 稲毛図書館の開館時間は午前9時から午後5時15分である。一般的な勤務時間の社会人にとっては、平日は利
    63行 用しづらいように感じられる。開館時間の延長は人件費の増大につながるため、24時間貸出ロッカーの導入で
    64行 利便性向上が図られるのではなかろうか。返却については、最寄駅に返却ポストを儲けるなどの工夫がみられる
    65行 ので更なる利便性向上に期待したい。
文字数 2008文字
添付
参考
文献
千葉市の図書館』千葉市教育委員会2022年
『千葉県の図書館』千葉県公共図書館協会2021年

講評

千葉市立図書館のことがよく調べられています。

ご希望が実現するよう、働きかけてみてください。

さらに他館を訪れ、相違点を考えてみてください。


総評: 合格