図書館情報資源特論

設題 ※どちらかを選んで回答してください。
※選択した番号を本文に記載してください。
※ 2023 年6 月30 日までにテキストを購入された方(伊東先生テキスト)は①
2023 年7 月 1 日以降にテキストを購入された方(竹田先生テキスト)は②
を選択してください。

灰色文献とはなにか、灰色文献の定義や意義、特性について記述してください。
また、灰色文献と言われる具体的な資料名を挙げて、その資料の特徴について
も説明してください。

公共図書館が地域資料を収集するのはなぜかを考え、地域資料サービスの実践
例やデジタルアーカイブ化について自分の言葉で論じてください。
解答
      1行 一 灰色文献の定義や意義、特性
      2行  灰色文献とは、一般の商業出版ルートでは入手が困難な文献をいう。灰色文献は、少部数で配布先が限定され
      3行 ているとか所在確認や入手が極めて困難な文献である。通常の出版物の流通経路を通らないなため配布が限定さ
      4行 れているため、入手が困難である。2010年の第12回灰色文献国際会議においてプラハ定義と呼ばれるもの
      5行 があり、そこでは「知的財産権により保護された紙や電子のフォーマットで、政府、大学、ビジネス、産業のあ
      6行 らゆるレベルにおいて生み出される多様なドキュメント形態で、図書館所蔵や機関リポジトリで収集、保存され
      7行 る十分な質をもつものを表す。しかし、商業出版社によってコントロールされているのではない。主たる活動が
      8行 出版を本業としない組織によってコントロールされている。」と定義されている。
      9行  灰色文献をこのように定義し、他の文献と区別する意義は、近年、インターネットの普及から、灰色文献のか
    10行 なりの部分が印刷されずに、それぞれのホームーページに掲載されるようになったので、図書館の立場からする
    11行 と、このような情報をいかにキャッチし、所持していくかということが大きな課題のひとつとなっているからで
    12行 ある。
    13行  灰色文献は、流通経路が不明確で、少部数しか作成されていない、配布先が限定されているなどの特性を有し
    14行 ている。本や雑誌は書店で販売しているものばかりではなく、一般の出版物の流通ルートにのらない種類の本が
    15行 たくさんある。このような灰色文献資料は発行部数が少ないため、後から入手しようとしても用意には見つから
    16行 ない。また、インターネットの普及により、たくさんの情報や資料がインターネット上で公開されアクセスしや
    17行 すくなっているが、それらはインターネット上で閲覧やダウンロードができる状態にあるだけで、未来永久的に
    18行 アクセス可能なわけではない。
    19行 
    20行 二 灰色文献といわれる具体的な資料名とその資料の特徴
    21行 1 テクニカルレポート
    22行  テクニカルレポートとは、もともとアメリカが国家規模の研究計画に対して、その研究成果を一定の形式で研
    23行 究助成機関に報告する義務を課したことからはじまった情報技術の伝達手段である。日本でも政府機関や専門研
    24行 究機関において、さまざまな調査研究や委託研究がおこなわれ、成果報告書がかんこうされるが、それは、研究
    25行 成果としての技術情報を組織内に伝達する形式のひとつとしてテクニカルレポートとみなされる。
    26行  テクニカルレポートの特徴は、雑誌のような査読制度はなく、内容に応じて長さや形式が自由な1件1論文の
    27行 報告書となっている。配布は組織内に限定されている。
    28行 2 学位論文(博士論文)
    29行  学位を取得するために書かれた論文をいい、提出された大学で審査をうける。学位制度は国によって異なるが
    30行 、日本では、学位論文は独創性や先行研究、重要文献のレビューなどを踏まえた新しい知見がえられるので、分
    31行 野によっては、一次資料として価値が高い。
    32行  学位論文の特徴は、流通を目的としていないので、利用する機会に恵まれないが、提出先の大学と国立国会図
    33行 書館が所蔵しているので、閲覧することはできる。
    34行 3 会議資料
    35行  会議には、国内外の学会、大会、研究集会、シンポジウム、講演会などさまざまな形式がある。参加者だけに
    36行 配布されるプログラムや予稿集、発表などは速報性があり、学術動向などを知るうえで貴重な情報源となる。
    37行  会議資料の特徴は、一般に配布されないので、情報の入手は難しく、後日、発表論文等を掲載した会議録が公
    38行 刊されることもある。
    39行 4 紀要
    40行  大学や研究機関から主として学術論文や研究発表を掲載し、年1回程度刊行される機関誌をいう。
    41行  紀要の特徴は、学内の研究成果の発表の場と化しており、公立図書館では、地域の大学紀要などを収集してい
    42行 るが、読者が限定されているので利用は少ない。
    43行 5 政府刊行物
    44行  国および地方自治体の公文書、調査報告書、審議会資料をはじめ政府や助成金による研究調査・報告書などの
    45行 総称である。
    46行  政府刊行物の特徴は、政策方針の決定や動向に大きな影響を与える資料として、市民の注目を集めているが、
    47行 当局や発行者側には、情報公開の意識が脆弱なため、市販されているものはともかく、一般的入手方法は困難さ
    48行 を増している。
    49行 6 企業文献
    50行  企業が社内や消費者を対象にイメージを高めるために刊行する資料群の総称である。
    51行  企業文献の特徴として、社史、広報誌、製品カタログなどは、レファレンスツールとして役立つ。
    52行 7 その他
    53行  1~6までの資料のほか、翻訳文献や特許資料も灰色文献に該当する。
    54行  翻訳文献の特徴は、難解な言語で書かれた図書や雑誌論文の翻訳文献は、どこでどのように翻訳され、発表さ
    55行 れ、保存されているのか見えにくい。また、特許資料の特徴として、出願人が作成した特許明細書、特許庁が発
    56行 行する公開公報と広告公報などが利用対象となる。
    57行 
    58行 三 まとめ
    59行  灰色文献は、入手可能性が高くないが、その資料価値は高いものも多くある。よって、図書館は住民の知る権
    60行 利を保障するため、積極的に収集する必要がある。
文字数 2065文字
添付
参考
文献
池田貴儀著「問題提起:灰色文献定義の再考」情報の科学と技術62巻2号50頁 2012年
池田貴儀著「インターネット時代の灰色文献 灰色文献の定義の内容とピサ宣言を中心に」情報管理Vol.58 no.3 193頁 2015年
井上真琴著『図書館に訊け!』ちくま新書 2008年 4-480-06186-X
馬場俊明著『図書館情報資源概論』日本図書館協会 2012年 978-4-8204-1217-5
伊藤民雄著『図書館情報資源概論』学文社 2012年 978-4-7620-2304-0
宮沢厚雄著『図書館情報資源概論 新訂第4版』理想社 2018年 978-4-650-01093-0

講評

灰色文献の定義や特徴ついて記述できています。
近年の灰色文献は、一部ウェブで公開されているものもあります。
どのようなデータベースで閲覧できるのか調べて具体的に記述するとさらに良くなったでしょう。
 


総評: 合格