図書館情報資源概論
設題 | 公共図書館が収集するネットワーク情報資源の種類や特徴、提供事例について述べてください。また、若い世代に対して情報資源の利用をどのように広報・PRしていくべきかあなた自身の考えを含め、論じてください。 |
解答 |
1行 一 ネットワーク情報資源の種類と特徴、提供事例
2行 近年、コンピュータおよびインターネットの発展により、ネットワーク情報資源が身近なものになったといえ 3行 る。ここで、ネットワーク情報資源とは、日本図書館情報学会用語辞典編集委員会によると「インターネットを 4行 基盤とするコンピュータネットワークを介して探索、入手、利用可能な情報資源」をいう。具体的にどのような 5行 ものがあるか以下に記載する。 6行 1 有料・無料データベース 7行 雑誌記事、辞書・事典、新聞記事、過去のウェブサイト等を閲覧利用できるデータベースで、有料のものと無 8行 料のものがある。有料データベースは、図書館が契約しユーザーIDとパスワードを入力して利用できる。官公 9行 庁系が提供しているデータベースには、無料データベースが多い。 10行 2009年の著作権法第31条第2項新設により、国立国会図書館が所蔵する資料を保存する目的でのデジタ 11行 ル化が可能となり、これらの資料を国立国会図書館デジタルコレクションとして確認できるようになった。一部 12行 は申請することで閲覧、または法律により制限のかかっている資料は公共図書館でのみ閲覧が可能となっている 13行 。 14行 2 電子ジャーナル 15行 電子ジャーナルとは、日本図書館情報学会用語辞典編集委員会によると「従来は印刷物として出版されていた 16行 雑誌、とりわけ学術雑誌と同等の内容を、電子メディアを用いて出版したもの」と定義されている。出版後すぐ 17行 に利用者のもとに届けることができ、過去の膨大な数の論文を一括して検索することができるという利点をもつ 18行 。 19行 提供事例としては、神奈川県立川崎図書館でTaylor&Francis社が1996年以前に刊行した化 20行 学、物理、数学・統計学分野の雑誌などを閲覧できる。 21行 3 電子雑誌・書籍 22行 電子雑誌とは、商業雑誌などをオンライン上で読むことができる雑誌のことである。近年のコミックやファッ 23行 ション雑誌は、紙媒体と並行して出版しいる。また、電子書籍とは、PCや汎用タブレット端末、電子書籍リー 24行 ダーなどのデバイスで閲覧フォーマットを用いて、ネットワーク上のデジタルデータを読むことができるものを 25行 いう。現在の電子書籍のほとんどは、インターネット経由でデータをダウンロードまたはデータにアクセスする 26行 タイプのものである。 27行 この最初の提供事例は、2002年北海道・岩見沢市図書館であり、当初、電子化された岩波文庫の109作 28行 品を館内で自由に読むことができるサービスを実現した。これは、図書館内の専用端末での閲覧であったが、近 29行 年、非来館型サービスの一つとして、ネットワークを介して電子書籍を貸出することが一般的になってきた。2 30行 007年11月、東京都・千代田区立図書館では、千代田Web図書館を開始した。これは初めて非来館型サー 31行 ビスとして、インターネット上で貸出・閲覧できる電子書籍の貸出サービスであり、学習系や語学学習用のオー 32行 ディをブックなど約4,000タイトルを提供した。また、関西圏では大阪府・堺市立図書館が電子書籍サービ 33行 スを始め、約1,100タイトルを提供した。 34行 4 音楽配信サービス 35行 音楽配信サービスとは、インターネットの普及により、ネットワークを介して音楽をデジタルデータで配信す 36行 るサービスである。 37行 このサービスを公共図書館で最初に取り入れたのは、2008年2月の岐阜市立図書館である。続いて200 38行 8年9月に岐阜県・高山市図書館が導入している。このサービスを導入することで利用者に対して約100万曲 39行 を提供することができる。 40行 5 デジタルアーカイブ 41行 デジタルアーカイブとは、原資料を所蔵している所蔵館や提供元が有形・無形の文化資源をデジタル化し、ネ 42行 ットワーク上に保存した保管庫のことである。 43行 提供事例としては岡山県立図書館のデジタル岡山大百科がある。また、大阪府・豊中市立図書館と箕面市立図 44行 書館の地域情報のアーカイブである北摂アーカイブスがある。このデジタルアーカイブのコンテンツ収集方法は 45行 、住民が所有する写真の提供・協力によって成り立っている。 46行 47行 二 情報資源の利用をどのように広報・PRしていくべきか 48行 若い世代はインターネットの普及により、YouTube、Twitter、Facebook、Insta 49行 gramなどによる情報発信を含め、パソコンやスマートフォンの利用が当たり前の状態になっている。このよ 50行 うな情報環境においては、ネットワーク情報資源について抵抗があまりないと思われる。よって、図書館は紙資 51行 料だけではなく、電子雑誌・書籍をはじめとするネットワーク情報資源も豊富に存在するということをアピール 52行 する必要がある。 53行 また、若い世代のうち図書館にあまり来館することのない人たちにとって、ネットワーク情報資源は非常に有 54行 効であるといえる。ネットワーク情報資源の提供は、非来館型サービスの一環として、もっと広報・PRしてい 55行 くべきである。 56行 さらに、図書館になじみのない若い世代で、読み・書きに困難を抱える者についても、点字・録音資料やDA 57行 ISY等のほか、音読機能のある電子書籍のようなネットワーク情報資源の存在を知らしめるべきであろう。 |
文字数 | 2089文字 |
添付 | |
参考 文献 |
伊藤民雄著『図書館情報資源概論』学文社2012年 978-4-7620-2304-0 藤田岳久編著『図書館情報資源概論』学文社2016年 978-4-7620-2198-5 馬場俊明編著『図書館情報資源概論』日本図書館協会2012年 978-4-8204-1217-5 |
総評: 合格 |