生涯学習概論

設題 生涯学習支援のために図書館が果たす役割とは何かについて述べなさい。
生涯学習を振興するために、社会教育行政や施設の基本的な役割について述べなさい。
解答
      1行 一 生涯学習支援のため図書館が果たす役割
      2行  生涯学習は、生涯にわたって知識や技術の向上、自己の充実を目指すもので、人々が学習を通して社会と関わ
      3行 り、豊かな人間性を追求することに大きな意義がある。そこでの学習には、図書、雑誌・新聞、パンフレット等
      4行 の印刷資料とネットワーク情報資源が不可欠であり、図書館はそれに関係しており、その役割を以下に記載する
      5行 
      6行 (1)人々の読書と学習に必要な資料を収集し、人々が求める資料や情報を案内し、探索して提供することによ
      7行 って、人々の読書と学習を支援することである。図書館にはあらゆる分野、あらゆるテーマに関する資料が収集
      8行 されていなくてはならない。それは図書館が利用者の情報ニーズに応えて、情報または情報の素材となる情報資
      9行 料を提供するサービスを行っているからある。学習とは何らかの形での情報獲得の過程であり、人々は図書館を
    10行 利用することによって直接、ほとんどの形態の学習活動を実践することができるのである。
    11行 (2)日本国内のさまざまな人々、世界各国のさまざまな人々が出版・刊行した資料や情報を収集し、広く人々
    12行 に提供することによって、地域を超え、国境を越えた知識の流通・伝播・普及を促進することである。これによ
    13行 って、人々は、自国や世界の事情と人々の考え方を知ることができるのである。
    14行 (3)過去の時代に出版・刊行された資料を収集・保存し、次の時代の人々に提供することによって、世代間の
    15行 文化的・知的遺産の蓄積と継承を行うことである。図書館の蔵書はその図書館の利用者の情報ニーズを反映した
    16行 ものである以上、その蔵書が図書館で保存・伝承されていくことで、地域コミュニティの文化の伝承・発展が可
    17行 能になる。
    18行 (4)資料や情報の利用が困難な障がい者や高齢者に対して、資料と情報を提供する役割をもっている。生涯学
    19行 習は地域住民のすべてに保障されなければならないので、いわゆる障がい者サービスについても、その充実・拡
    20行 大が図られなければならない。障がい者に対するサービスでは、視聴覚しょう害、身体障がい等の障がいの種類
    21行 に対応した資料・情報、サービス、設備を提供している。生涯学習の理念にとって大切なことは、すべての人が
    22行 その外的条件にかかわらず、まったく平等な学習機会を提供されるべきである。
    23行 
    24行 二 生涯学習を振興するための社会教育行政や施設の役割
    25行 (1)社会教育行政の役割
    26行  教育基本法第12条では、社会教育行政の基本的役割として「図書館、博物館、公民館その他の社会教育施設
    27行 の設置、学校の施設の利用、学習の機会及び情報の提供その他適当な方法によって社会教育の振興に努めなけれ
    28行 ばならない」とされている。社会教育行政は、公民館、図書館、博物館の設置、学級・講座の実施、イベントの
    29行 開催、指導者の研修などさまざまな施策を通じて、人々の自発的・自律的な学習活動を奨励・促進・支援すると
    30行 ころに主要な任務がある。それは国民一人一人の生涯を通じた学習支援として、国民の学習意欲をささえること
    31行 につながり、学校内の学習スタイルが、与えられた課題に対する一斉学習とすれば、生涯学習は自ら課題を発見
    32行 し、解決に向けて主体的に課題解決学習を行うという、義務や強制を伴わない自発的な学びをささえるというこ
    33行 とである。
    34行  また、社会教育行政は教育行政の一環として、教育の中立性・継続性・安定性が求められる。このことは教育
    35行 基本法第16条においても、「教育行政は国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互協力の下、公正かつ適
    36行 正に行われなければならない」と明示されている。国と地方橋団体によって、社会全体の教育力の向上につなげ
    37行 る必要があり、人々が学習活動に取組みやすい環境・条件を整備し、人々の社会教育活動を支援、奨励、促進す
    38行 ることに努めることが重要である。
    39行 (2)施設の役割
    40行  社会教育施設とは、もっぱら社会教育を行うために設置された教育機関である。社会教育施設には、地域住民
    41行 の学習拠点である公民館や広域的な観点から県民の生涯学習を支援・推進する生涯学習センターなどの総合的な
    42行 機能を持つ施設と、図書館、博物館、青少年教育施設、女性教育施設、文化会館、社会体育施設などの専門領域
    43行 を対象とする施設がある。ここから生涯学習の多様性を窺い知ることができる。
    44行  社会教育施設教育機関としての役割を果たすためには、いわゆるハコモノとしての施設(設備・資料等を含
    45行 む)はもちろんのこと、そこでさまざまな教育事業(たとえば公民館の学級・講座、図書館の貸し出し、博物館
    46行 の展覧会など)が展示されていること不可欠である。さらに、そこには各地方自治体間の格差と各施設間格差が
    47行 存在するが、日常的に生涯学習を勧める拠点施設の整備は、すべの国民があらゆる機会・場所を利用して教養を
    48行 高められるように環境醸成に努める必要があるため、重要な役割を担っているといえる。
文字数 1982文字
添付
参考
文献
渡部幹雄著『生涯学習概論』学文社2016年 978-4-7620-2578-5
高山正也他著『司書・学芸員をめざすひとへの生涯学習概論』樹村房2002年 4-88367-064-3
朝比奈大作著『図書館員のための生涯学習概論』日本図書館協会2013年 978-4-8204-1224-3

講評

設題①は「生涯学習支援のための図書館の果たす役割」ですが、ここではテキストの7章「生涯学習支援における図書館の役割」を参考にすること。ここでは要点を押さえています。これでよいです。

設題②は、テキストの3章「生涯学習振興行政と社会教育行政」を参考にすること。特に2項(1)「社会教育行政の基本的役割」と3項(1)「社会教育施設」が焦点になりますが、ここもこれでよいです。公民館についてももう少し詳しく述べるとよかったですね。

これで合格です。今後も精進して頑張ってください。


総評: 合格